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「み~つけたっ」
………。
「あれ?聞こえない?」
………。
「先輩をしかとしちゃうとかやるねぇ」
軽く叩かれた頭に声をかけられているのが自分にだと気づく。
………。
「あっ…もしかして、この前の…」
「せーかい。忘れてた?」
慌てて首を振ってもきっとバレてるよね。
「すみません…」
「やっぱり。ずっと俯いていたもんね」
目を細めて、口角を上げた先輩に恥ずかしい程に体温が上がったのがわかる。
「顔、真っ赤。これから体育なんだ。ちゃんと日焼け止め塗った?綺麗な肌が焼けちゃうよ?」
「………」
「そう言えば、名前聞いてなかった」
「…丸岡です」
「ふぅん…丸岡さんね、俺は松井幸樹、幸樹くんって呼んでね」
肩をサラッと撫でられて、私の意志とは関係なく震える体。
そんな私の反応に満足そうに、フッと笑って友達の輪に戻っていく背中を見る。
先輩を名前なんかで呼べるわけないよ…
それに今日は体育館でバレーだし、日焼け止めなんていらないもん。
一緒に移動してた友だちが、もう先輩と仲良くなったの?と目を丸くする。
「仲良くなんてなってないよ。この前コンピュータールームがわからなくて教えてもらっただけ」
あっ、またお礼言いそびれた。
もぉ!ホント何やってんの私…
どんどん離れていく後姿に落ち込む。
先輩って背が高いのに姿勢良いよね。細身の体にピッタリな制服のブレザーの肩から肩まで生地が張って、肩甲骨の間はブレザーに付いていない。
顔だって一瞬見ただけだけど、きつめなのに全てがバランスよく収められていた。
開かれた窓から入り込む光に当たると茶色い針金みたいな髪は透けてみえて…
隣を歩く人より手足が長く見えるのは背が高いせいかな…。
綺麗な人だったな…って何となく見ていたらゆっくり振り向いた先輩と目が合った。
私を見た瞳の色がほんの少し驚いたように見開かれたと思ったら優しく細められた。
えっ?ちょっと待って!
何この心臓!
落ち着け!
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