みなかみ町の悪夢

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「・・・・・・きて・・・・・・さい・・・・・・!」  誰かの大きな声が意識の遠くから響く。 「う~ん・・・・・・」 「守さん、起きて下さい!」 「・・・・・・うわっ!」  守がはっと目を覚まし飛び起きる。横を見上げると理恵がそんな客人の様子を見てクスクス笑っていた。守も思わず表情を合わせ恥ずかしそうに起き上がる。 「ああ・・・・・・すみません。どのくらい寝てました?」 「20分くらいです。」  そう言って理恵はテーブルに作った料理とオレンジジュースを並べる。炊き立てのご飯にかけられたカレー香ばしい香りが漂う。ちょうど空腹だっただけに食欲が一層湧いてくる。 「先に召し上がって下さい。おかわりが欲しかったら遠慮なく言って下さいね?」 「すみません。自分からぶつかったのに逆にこのようなもてなしを・・・・・・」 「気にしないで下さい。あなたが『初めて』じゃないので。」 「え?」  理恵が笑顔でこちらを見ていた。守はその意味を理解出来ぬまま"いただきます"と手を合わせ早速オレンジジュースを一気に飲み干す。氷の冷たさと甘い果実の旨みが舌に触れ喉を潤す。グラスを置き"ぷはあっ"と爽快な息を吐き出した。 「美味しいオレンジジュースですね。よく冷えてて・・・・・・あれ・・・・・・?」  何故か急に目まいと睡魔が押し寄せ意識が遠くなってきた。視界もぼやけて目の前の光景がぐにゃりとねじ曲がっていく。頭が働かず言葉が出ない。何も考えられない。 「理恵さ・・・・・・」  訳が分からず彼女に問いかけた途中で守はふっと気を失いうつ伏せに倒れた。細い目蓋を完全に閉ざすと人形のように動かなくなった。 「ふふ、美味しい『お肉』、捕まえた・・・・・・」  理恵は立ち上がり不気味に笑い呟いた。意識をなくしたばかりの守の体を力任せに引きずり廊下へ消えた。
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