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話をしている間に理恵の家が見えてきた。彼女の家は一階建ての小さな民家で屋根は瓦でできていた。家のまわりには細い木のの囲いで囲まれている。雨には強そうだが強風には弱い、そんな見た目をしていた。
「お邪魔します。」
「どうぞどうぞ、ようこそ我が家へ。」
玄関で靴を脱ぎ茶の間へと案内される。茶の間には古い電気に低いテーブルと棚しかなかったが悪くない。落ち着く木の香り、休息を取るのには持って来いの場所と言える。庭はなかなか広く緩やかな風になびく洗濯物が見える。
「とてもいい場所ですね。」
守はすっかりこの部屋が気に入り様子で狭い室内を見渡す。
「そう言って頂けると嬉しいです。・・・・・・でも、妹はどこ行ったんでしょう?」
「え?妹さんがいるんですか?」
「はい、多分近くの公園で遊んでいるんですね。あっ、守さんはここでくつろいでてください。カレーライスを作ってきますので。」
そう言って理恵は茶の間から去って行った。守は理恵の言葉に甘えテーブルの下に足を入れ畳みの床に寝っ転がった。
「はあ~。」
そして気持ちよさそうな息を天井を眺めながら吐いた。小さな家だが心地いい。このまま眠ってしまいたい。そう思った。ふと、横を見て気づいた。ふすまの戸にまるで何か液体をぶちまけたような茶色い染みがある。しかし守は古いからこうなったんだろうと思った。
次に棚の上の置いてある達磨に目が止まった。達磨には人の指の血痕らしき跡がべっとり付着していた。まだ真新しい血液にも見えた。
「理恵さん、怪我した手で達磨に触ったのかな?」
そんな程度にしか考えられなかった。別に気にせずだらしない姿勢を保ったままゆっくりと目を閉じた。
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