眠り姫

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僕は今日、同棲中の彼女と喧嘩しました。 彼女の大切にしていた時計を、誤って踏んで壊してしまったのです。 彼女は怒り狂いました。 付き合って五年になるのですが、あそこまで怒った姿をみたことがありませんでした。 今思えば、多分、日頃からストレスが溜まっていたのだろうと思います。 僕の何気ない一言が、考えなしの言動が、少しずつ少しずつ彼女に堆積し、ついに耐えきれない重さになってしまったのでしょう。 決壊したダムから漏れ出した水の如き彼女の怒りは、氾濫河川となり、すぐに下流域の街を飲み込んでいきました。 力に任せた破壊行為を繰り返し、部屋には本や食器や洋服などが飛び交いました。 もちろん、僕は止めにはいりました。 しかし、怒りの原因はまがいもない、この僕です。 そんな僕が止めたところで、それは逆効果、火に油をそそぐどころかガソリンをぶちまけたように大爆発を起こしました。 そうなると、僕もいよいよ穏やかではいられなくなっていきました。
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