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 鈍い冷たさに、目が覚める。  上掛けからはみ出していた腕が、冷凍寸前になってるらしい。布団の中に引き戻すと、熱い湯船に入った時みたいにじわじわと温まる感覚がする。しばらくそうしていたのだが、なんとなく目が冴えてしまって、慧斗はベッドから降りた。熟睡している乾をこごえさせないように、しっかりと上掛けを閉じる。つられて一緒に寝ていたけど、その前にずいぶん寝てしまったので、自分には昼寝程度の睡眠が限界だった。  コンポの時計は、深夜と早朝の変わり目くらいの時刻を示している。どうりで、一番寒い時間帯だ。カーテンを少し開けて外を見ると、暗い景色に大粒の雨が光って見える。降り始めがいつかは分からないが、じきにやみそう、という印象はない。今日は、冷たい雨の一日になるでしょう。  壁際のヒーターを少し手前に引っ張って、スイッチを押す。少し経って着火が始まり、チキチキ……その小さな音でも心配になって、ベッドを振り返ってしまった。大丈夫、寝てる。  部屋着のセーターを頭から被って、座り込む。テーブルの上から取り上げたのは煙草とライターで、火を点け、深く吸い込むと、ニコチニズムの幸福に全身が満たされるのだった。  夜中まで、たくさんした。  シャワーで流したけど、感覚はまだ生きていて……なんて思い出してしまうと、煙草を咥えた唇が震え出すのだから、結構、病的、かも。  ふと無意識に、左手の薬指を触る。こうやって無意識に手をやった時、何も嵌められていないとどれだけ心臓が痛くなるか……嫌ってほど思い知らされたから。今はちゃんと、硬くて冷たいものがヒットすることに安心して、慧斗はゆっくり煙を吹き上げた。  ふーっ。 <終わり>
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