1人が本棚に入れています
本棚に追加
「何を言っているんだね、ユキくん。
そんな事をしたら、人類皆、夢の世界に逃げてしまうではないか。
確かに、時には現実逃避は必要だと思うよ?
だが、それは『一時』であって、『永遠』であってはならないのだ。
だから、私は『忘れ去られた夢だけ』を抽出する装置を発明したんだ。
忘れ去られてしまった下らない夢を見て、『はぁ、下らない!』と失笑して、明日の活力にするんだ。
それを金儲けに利用するなど…君には夢が…浪漫がないのかね…『夢』という単語に近い名前をしているというのに…。」
「『ユ』から始まって、2文字で終わる名前の人なんて、この世の中に5万といると思いますが…
…では、教授、研究費はどうするのですか?」
「…すっかり忘れていたよ…」
と教授は今気づいたかのように呟いた。
「はぁ…成果を上げられないと、研究費は下りませんよ?大体その装置もお金を使って出来たのでは?」
「これはさっきも言った通り、使わなくなったドライヤーを譲ってもらったし、部品も今まで使わなかった物を再利用したから製作費は『ただ』だよ!」
もうダメだ、この人には何も言っても通用しない…。
「…はぁ、頭が痛くなってきた…。」
「頭が痛い?大事な教え子の君が体調を崩してしまっては大変だ!!頭が痛いのなら、今すぐに寝たまえ!さぁ!さぁ!」
と教授は嬉々として、私をお釜ドライヤー…じゃなかった、『Dream Vacuum』に座らせようとした。
「…私を実験台にしようとしているのでは?」
「成果がないと研究費は下りないのだろう?だったら、実験をして、効果を試してみる必要がある!」
と教授は意気揚々と答えた。
「…教授、無駄だと思いますよ。」
「何故かね?」
「…教授のインパクトが強すぎて、今から見る夢は全て忘れたくても忘れられないでしょうから…。」
最初のコメントを投稿しよう!