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「望愛ちゃん、優しくしなくていいよ。すぐ調子に乗るから」
「え……」
「同居人がいいって言ってるなら、いいよね?お兄ちゃん」
そう言いながら彼女は既に靴を脱いでいて、大きな荷物を持ち部屋に上がった。
さっきまで泣いていたはずなのに、涙は完全に止まっているようだった。
もしかして……嘘泣きだった?
「麗奈。僕はまだいいなんて一言も……」
「今夜だけならいいでしょ。あ!もしかして今から食事だったの?ねぇ、私の分もある?」
「あ……はい!す、すぐ準備しますね」
「言っておくけど私、まずいものは食べないから」
「は、はい……」
今夜のメニューのカレー、多めに作っておいて良かった。
でもまずいって言われたらどうしよう。
瀬名さんの妹だからって、同じ味覚だとは限らない。
「麗奈、食べたいなら自分で準備しろよ。望愛ちゃん、麗奈の分は準備しなくていいから。望愛ちゃんと僕の分だけ用意して」
「そ、そういうわけにはいきません」
瀬名さんにとっては面倒な来客なのかもしれないけれど、私が彼女を雑に扱っていい理由はない。
結局瀬名さんの言うことは聞かずに、三人分の食事を用意した。
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