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「ふーん。まぁ、見た目は美味しそうね」
「偉そうなこと言うなよ。料理なんて何も出来ないくせに」
「だって包丁使って手を切ったら大変じゃない」
「一度痛い目にあった方がいいんじゃないか?」
この兄妹の会話……聞いているだけでヒヤヒヤする。
妹の麗奈さんが、瀬名さんをすごく慕っていることは、この場にいるだけでも伝わってくる。
それに、今日のお昼に見た光景。
きっと麗奈さんはお兄さんのことが大好きなんだろう。
それに比べて瀬名さんは、どこか妹に対して素っ気ないような気がしてしまうのは私だけだろうか。
「お兄ちゃん、もしかして怒ってる?」
「あぁ、怒ってるね」
「……ごめんなさい」
麗奈さんが食事の手を止めて謝っているのに、瀬名さんは一切麗奈さんの方を見ようとはしない。
瀬名さんを怒らせると怖いんだと初めて知った。
「僕に謝るよりもまず先に、彼女に謝るべきだろ」
「……え、わ、私ですか?別に、私に謝らなくても……」
「失礼なことを言ってごめんなさい。……これでいい?」
麗奈さんは少しふてくされながらも、私に謝ってくれた。
素直じゃない謝り方。
それなのに、なぜか嫌な気はしなかった。
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