318人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「どうして気になったの?」
「ど、どうしてって……」
私の手に触れていた瀬名さんの指先が、私の頬へと移動した。
彼の指が頬を優しくなぞる度に、胸が震える。
「望愛ちゃんは、僕のことどう思ってる?」
「わ……私は……」
心臓の音が瀬名さんにも聞こえてしまいそうなくらい、激しい。
どう思っているか、なんて。
答えは、一つしかない。
「僕は、正直少し戸惑ってるよ」
「え?」
「こんなにも欲しいと願った人は、君が初めてだから」
「……っ」
「触れると、抑えられなくなりそう」
私の頬をなぞっていた指先は、唇へと滑り落ちていく。
「せ、瀬名さん!わ、私……!」
あなたのことが、好きです。
そう、言いたかった。
もう気持ちは決まっていた。
こんなにも胸が震えるのは、目の前にいるのが瀬名さんだから。
でも、どうしても自分の過去が邪魔をする。
受け入れがたい過去。
私自身、いまだに苦しめられている。
瀬名さんにとって、どれだけ重荷になってしまうのだろう。
そう思ったら、簡単に好きなんて言えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!