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「どれだけ酷い話でも……聞いてくれますか……?」
「もちろん。望愛ちゃんのことなら、何だって知りたいから」
そのとき、リビングにあまり聞き慣れないメロディーが流れてきた。
また炊飯器の音かと思ったけれど、いつもと違う。
「あ、あの、この音……?」
「あぁ、浴室からの呼び出し音だから気にしなくていいよ」
「麗奈さんが呼んでるんですよね?わ、私、行ってきます」
「無視していいよ。どうせ大した用じゃないから」
「む、無視したらダメですよ!」
私は逃げるようにその場から立ち去り、浴室へ向かった。
正直、このタイミングで麗奈さんが呼び出してくれて助かったと思った。
本当は、立っているのもやっとのくらいだった。
瀬名さんの真っ直ぐな想いに、胸が壊れる寸前だった。
浴室の扉を開けると、バスタブのお湯に浸かりくつろぐ麗奈さんの険しい表情が目に映った。
「ねぇ、これシャンプーとコンディショナーどっちがどっちかわかりづらいんだけど。あとトリートメントはどこ?」
「あ、すみません!左がシャンプーです。トリートメントは、私使ってないので……」
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