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「物置の扉が開いたとき……初めて、光が見えた気がしました」
助け出されたときは、夜だった。
それなのに、はっきりと私の視界には光が射し込んでいた。
泣きそうな顔で叫びながら私に駆け寄る柊ちゃんの姿と、警察官の姿が見えた瞬間。
あぁ、私、助かったんだって思った。
もう、苦しまなくてもいいんだって。
痛い思いはしなくてもいいんだって、安心した。
「だから、柊ちゃんは私にとって、命の恩人なんです。感謝しても、しきれないくらいです」
「……助け出された後は、父親には会ったの?」
「父には……一度も会っていません。柊ちゃんも、連絡は取っていないはずです。……重たい話になってしまって、すみません……」
「謝ることじゃないよ」
本当は、好きな人にこんな話、したくなかった。
こんな重い過去、欲しくなかった。
でも、自分を知ってもらうためには、この話を避けて通ることは出来ない。
あの過去があったから、今の私がいる。
瀬名さんが好きになってくれた、今の私がいる。
そう思えば、少しだけ自分の過去を見つめる角度が変わる気がした。
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