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「望愛ちゃんは僕のこと、まだまだわかってないね」
「え……」
「君がどんな過去を背負ってきたとしても、僕の気持ちが変わることはないよ」
「……っ」
「それに、君は被害者だ。何も負い目を感じることなんてない。幸せになっても、いいんだよ」
父から暴力を受けて育った。
確かにそれだけ聞かされれば、私は被害者だと思うだろう。
でも、違う。
ずっと、誰にも言えなかった。
私が愛される資格がないと思ってしまう理由は、他にある。
「ち、違うんです……私は、瀬名さんに想ってもらえるような人間じゃないんです……」
「何が違うの?」
心の中で、ずっと否定し続けていたかった。
でも、認めざるを得なかった。
「……私は、加害者なんです……」
私を娘として見てくれなかった父に対してではない。
私を娘として育ててくれた、母に対してだ。
「どういうことか、説明してくれる?」
柔らかな瀬名さんの声が、胸に響く。
取り乱しかけていた私は、その声を聞いて少し落ち着きを取り戻した。
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