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「望愛ちゃんは、もう十分苦しんだよ」
「……っ」
「だからもう、苦しまなくていい。君のお母さんも、君が幸せになることを願ってるはずだよ」
母の心は、徐々に病んでいった。
けれどその中でも、日記を書くことをやめなかった。
最後のページの日付は、母が亡くなる前日だった。
今までと何一つ変わらず、私の成長を喜ぶ内容だった。
不思議だ。
瀬名さんの言葉一つで、思考が驚くほどに変わっていく。
「わ、私……本当に、いいんですか……?」
ずっとずっと、心の片隅に母がいた。
それはこの先も、変わることはない。
母のことを、忘れることは決してない。
でもきっと、存在する形は変化していく。
私にとって、母は唯一の理解者だったはずだ。
安らげる存在だったはずだ。
けれど、いつの間にか私の中で、重く暗い過去の象徴に変化してしまっていた。
本当にもう、いいのだろうか。
母と過ごした日々を、幸せだったと言っても許されるのだろうか。
「私……幸せになってもいいですか……?」
自分の気持ちを、これ以上偽ることは限界だった。
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