一生分の勇気

17/26
前へ
/26ページ
次へ
「僕のそばにいてくれるなら、間違いなく幸せになれるよ」 私の過去を知っても、変わらず好きだと言ってくれることを、多分私は心のどこかで期待していた。 でもその期待よりも、不安の方が遥かに上回っていた。 瀬名さんの言葉には、いつだって嘘がない。 たった一言で、不安を消し去ってくれる。 まるで、何かの魔法みたいだ。 「そろそろ、僕のことどう思ってるか聞かせてもらってもいい?」 瀬名さんは小さく顔を傾け、私の泣き顔を覗き込んだ。 私を見つめるその瞳は、既に全てを見通している。 「……ズルい、です……」 「何が?」 「だ、だって、その言い方……っ、私の気持ち、もうとっくにわかってるじゃないですか……」 「望愛ちゃんの声で、聞きたいんだよ」 そんな愛しい人を見つめるような視線を向けられてしまったら。 誤魔化すなんて、出来るはずがない。 「……瀬名さんが、好き、です……」 あぁ、ついに言ってしまった。 自分の気持ちを自覚してからずっと、何よりも伝えたかった言葉。 それなのに、何よりも伝えることを躊躇ってしまった言葉。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

314人が本棚に入れています
本棚に追加