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瀬名さんに助手席に座るよう促された私は、車のドアを開けて彼の隣に座った。
隣にいるだけで、ほっとする。
車の中は、瀬名さんの香りが溢れている。
私はいつから、この香りを好きになっていたのだろう。
「どこか行く?」
「え……」
「望愛ちゃんにとって落ち着ける場所で、話を聞こうと思ったんだけど。どこがいいかな」
私にとって、落ち着ける場所。
柊ちゃんが作ってくれた、このお店。
柊ちゃんとなっちゃんが、暮らしている家。
でもその二つよりも、一番最初に頭に浮かんだ場所があった。
「せ、瀬名さんの……家がいいです……」
瀬名さんと一緒に暮らしている、あの家。
私には相応しくないかもしれないけれど、今の私が帰りたい場所は、あの家だ。
「……本当に家でいいの?」
瀬名さんの問いかけに、私は小さく頷いた。
「せっかく、わざわざここまで来てくれたのに、すみません……」
「いや、いいんだよ。ただ早く会いたかっただけだから」
「……っ」
この胸の高鳴りは、どうすれば元に戻るのだろう。
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