春の嵐

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「ま、まだ付き合い始めたばかりなので、そこまでは……」 「でも彼氏、結構年上っぽいですよね」 「私より、八つ上です」 「三十過ぎてるなら、向こうは考えてるかもしれないですよね。それか、楠さんは結婚するまでの遊び相手とか」 「え……」 瀬名さんが私を本気で想ってくれていることは、誰より私がわかっているはずなのに。 自分にいつまでも自信が持てない私は、他人の言葉に簡単に動揺してしまう。 「本気にしないで下さいよ!冗談ですから」 「じ、冗談でもそんなこと言うのやめて下さい……」 あとどれくらいの時間が経てば、こんな冗談を笑って聞き流せるようになるのだろう。 強くなりたい。 何にも動じないような人になりたい。 でも、どうすれば強くなれるのか、わからない。 「俺より年上でこんなに初々しい人、初めて見ましたよ」 「すみません、何でも真に受けてしまって……」 「いや、謝らないで下さいよ。逆に萌えるっていうか……」 「え?」 そこで、お互い沈黙になってしまった。 どことなく変な空気が流れているのが、自分でもわかる。
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