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「本当に……ありがとうございました。失礼します」
最後にもう一度だけ感謝の気持ちを伝えてリビングを出ようとしたところで、瀬名さんのお母さんが口を開いた。
「あなた、自分の体調管理も出来ないようじゃダメよ。……次来るときは、しっかり睡眠を取ってから来なさい」
「え……」
まるで、また来てもいいと言われた気がするのは気のせいだろうか。
もう、ここに来ることは許されないのだと思っていた。
確かに私は、非常識な行動を取ってしまったはずなのに。
「……認めて頂けるんですか……?」
「……最初から認めないなんて一言も言っていないでしょう」
「……」
夢みたいだけど、これは現実だ。
もう、無理だと思っていた。
どうしよう。
嬉しすぎて……言葉が出ない。
「父さんも言ってたよ。また望愛に会いたいって」
「え……」
瀬名さんが、私の隣で優しく微笑む。
瀬名さんを好きになって良かった。
こんな私を好きになってくれて、良かった。
瀬名さんの周りにいる人たちは、過去に私が出会ってきた人たちとは違う。
私を、偏見の目で見るようなことはしない。
私には、瀬名さんに相応しくないと思われても仕方ない過去があるのに。
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