待ち受ける試練-2

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「それなら……どうして会社を継ぐと決めたんですか……?」 もしもその人間性を嫌いになったとしたら、その人が作り上げた会社を継ごうだなんて思えないはずだ。 私が知っている瀬名さんは、自分の気持ちに嘘をつけない人だから。 「……あれは、高校生のときだったかな。初めて、父が作った会社に出向いたんだ。働く父の姿を間近で見たときに受けた衝撃は、今でも覚えてるよ。……うまく言えないけど、多分僕はあの瞬間に、この会社を継ぐと決めたんだ」 きっと誰より尊敬しているはずなのに、なぜうまくいかないのだろう。 互いに歩み寄れば、分かり合えるはずなのに。 「矛盾、してます……」 「そうだね」 瀬名さんは、渇いた笑みを浮かべた。 「会社の社長としては、尊敬出来る人だよ。ただ、父親となれば話は別だ。僕はあの人を、父親として尊敬したことは一度もない。……そもそも向こうは、僕のことを息子として見たことなんてないんじゃないかな」 「え……」 「自分の後継者としてしか、見ていないと思うよ。それは父だけじゃなく、母もそうだと思うけどね」 私が思っていたよりもずっと、瀬名さんと両親の間の溝は、根深いものなのかもしれない。
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