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「わ、私の過去を知ったのに、どうして……」
「あなたの家庭環境や家柄で息子に相応しいか判断するようなことはしないわ。そんなものを気にするのは、二流や三流の証拠よ。言っておきますけど、瀬名家は一流ですから」
「……」
瀬名さんのお母さんには、本当に圧倒される。
一流だと言い切るその姿は、誰よりも凛々しくて、憧れてしまう。
「自分を苦しめる過去なんて、さっさと捨ててしまいなさい」
「……ありがとうございます……!」
最後の方は、涙が邪魔をしてしまって言葉にならなかった。
もう泣かないと決めても、涙は自然と溢れてきてしまう。
瀬名さんと両親の間にあった深い溝が、解消されつつある。
それだけでも嬉しいのに、瀬名さんの家族に私の存在を認めてもらうことが出来た。
ようやく私は、本当の幸せを手に入れることが出来たのだと思っていた。
そう。
間違いなく、私はこのとき、幸せの絶頂にいたんだ。
この先、自分の身に何が起きるのかなんて何も知らずに……。
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