決別の涙-2

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「思えば、お前と二人でどこかに出掛けたのは、あのときの一度きりだったな。……お前はもう、覚えていないだろうけど」 「……ちゃんと、覚えてるよ」 なぜあのとき、父は泣いていたのか。 その理由を聞こうと思ったけれど、なぜかもう聞かなくてもわかってしまった気がしていた。 父は、母が亡くなって悲しかったのだろう。 本当は、母の死で深く心を痛めたのだと思いたい。 どれだけ暴力を振るっても、ちゃんと母のことを愛していたのだと信じたい。 私はぬるくなったお茶を飲み終え、ソファーから立ち上がった。 「……多分、もう二度とここへ来ることはないと思う」 父に会いたいと思うことは、きっとない。 けれど、もしも偶然どこかで会うことがあれば、一度くらいなら会ってもいいかもしれない。 そんな風に思えた自分が、少し誇らしかった。 「……でも、元気でいてね。……さよなら」 「……望愛も、元気でな」 私は父の方を振り向くことなく、子供の頃の思い出が詰まった家を出て行った。 もう、ここへは戻らない。 私はこの瞬間、ようやく自分の過去と決別出来たような気がしたのだ。
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