341人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハンバーグ、美味しいですね」
「だろ?このハンバーグは、望愛と俺が試行錯誤して作った秘伝の味なんだよ」
他に客がいなかったからだろうか。
柊さんは普段よりもプライベートに近い顔を見せた。
僕が客だということを忘れているのかもしれない。
「俺は望愛と住んでるから、毎日こんな旨い飯が食えるんだよ。羨ましいだろ?」
「へぇ……一緒に住んでるんですね」
柊さんと望愛が親子ではないことには、早い段階で気付いていた。
親子だと呼ぶには少し無理があるけれど、柊さんは望愛を溺愛している。
でも、柊さんには恋人がいる。
一体、二人はどういう関係なのだろうか。
当然、気にならないはずがなかった。
「夏さんとは一緒に住んでないんですね」
「家がもう少し広ければ、三人で住めるんだけどな」
「夏さんと結婚しないんですか?」
僕は普段、あまり他人のプライベートには深く踏み込まないようにしている。
望愛の存在がなければ、柊さんの結婚のことについても深く聞き出すつもりはなかった。
けれど結果的に、僕のこの不意に放った質問が、思いがけない方向へ話を転換させることになる。
最初のコメントを投稿しよう!