恋に溺れる感覚

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「ハンバーグ、美味しいですね」 「だろ?このハンバーグは、望愛と俺が試行錯誤して作った秘伝の味なんだよ」 他に客がいなかったからだろうか。 柊さんは普段よりもプライベートに近い顔を見せた。 僕が客だということを忘れているのかもしれない。 「俺は望愛と住んでるから、毎日こんな旨い飯が食えるんだよ。羨ましいだろ?」 「へぇ……一緒に住んでるんですね」 柊さんと望愛が親子ではないことには、早い段階で気付いていた。 親子だと呼ぶには少し無理があるけれど、柊さんは望愛を溺愛している。 でも、柊さんには恋人がいる。 一体、二人はどういう関係なのだろうか。 当然、気にならないはずがなかった。 「夏さんとは一緒に住んでないんですね」 「家がもう少し広ければ、三人で住めるんだけどな」 「夏さんと結婚しないんですか?」 僕は普段、あまり他人のプライベートには深く踏み込まないようにしている。 望愛の存在がなければ、柊さんの結婚のことについても深く聞き出すつもりはなかった。 けれど結果的に、僕のこの不意に放った質問が、思いがけない方向へ話を転換させることになる。
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