恋に溺れる感覚

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「何で急にそんなこと言うんだよ……四人で新生活をスタートさせようって話してたのに」 「急に、じゃないよ……前から考えてて……」 「とにかく俺は反対。断固反対します」 柊さんが反対する気持ちはわかる。 娘のように可愛がってきた彼女が家を出るなんて、寂しくて仕方ないのだろう。 それに心配する気持ちも理解出来る。 一人暮らしをするメリットはもちろんあるけれど、リスクもないとは言えない。 特に彼女は人見知りで内気な性格だからこそ、彼は自分がそばにいない状況で彼女が傷ついてしまうことを恐れているのだろう。 「柊ちゃん、私……っ」 僕は彼女の声に、言葉を被せた。 「柊さん。彼女は、自立したいんじゃないかな。いつまでも柊さんに迷惑をかけたくない。合ってる?」 僕が彼女に視線を向けると、彼女は目を見開き戸惑いながらも小さく頷いた。 一人暮らしをするくらいなら、僕の家に住めばいい。 僕は今まで、恋人と同棲の経験はない。 同棲したいと言われることはあっても、頑なに拒絶してきた。 そんな僕が、付き合ってもいない女性と一緒に暮らすつもりでいる。 「僕の家においで」 彼女と暮らす日々には、きっと幸せしかないのだと簡単に想像出来た。
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