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人見知りで警戒心の強い彼女が、僕に心を開き始めたのはいつからだっただろう。
きっと同居を始めた頃は、まだ僕のことを多少は警戒していたと思う。
彼女の前には、目には見えない大きな壁がいつも立ちはだかっていた。
その壁は一緒に暮らしていく中で少しずつ崩れていき、次第に彼女は笑顔を見せるようになっていった。
僕は彼女の笑顔を目にする度に、胸の高鳴りを感じていた。
でもその笑顔には、いつもどこか言葉では表せないような苦しみが隠れているような気がしていた。
「副社長。同居されている楠さんのことなんですが」
「あぁ、望愛ちゃんがどうかした?」
「彼女の身辺調査は済ませているのでしょうか。もしまだでしたら、私の方で手配しますが」
葛城は僕と彼女の同居を知った頃、同居には反対の姿勢を貫いていた。
もちろん僕も、賛成されるとは思っていない。
だから、誰にも言わずに同居を始めたのだ。
誰にも邪魔はされたくない。
僕なりに、勘の鋭い葛城に悟られないよう慎重に事を進めたつもりだった。
「身辺調査なんてする必要はない」
「ですが、もしも彼女に何かあれば……」
「葛城。……何が言いたい?」
僕はこのとき初めて葛城に対して、本気で苛立ちを覚えた気がする。
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