恋に溺れる感覚

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「もし僕に黙って勝手に彼女の身辺調査をしたら、本気で怒るよ」 「……失礼致しました」 葛城は、僕が変な女性に引っ掛かっていないか心配してくれているのだろう。 彼は、そういう人だ。 いつも僕のことを最優先に考えて行動する。 僕が本気で怒ると言ったところで、葛城は決して怯まない。 結局彼は彼女の身辺調査を諦めたものの、どうやら僕に黙って彼女と接触したらしい。 もしそこで彼女を傷つけ貶めるようなことを口にしていれば、僕は葛城を許さなかっただろう。 でも僕は、彼が何か行動を起こすことを予測しながらも、敢えて彼の行動を止めるようなことはしなかった。 むやみに彼女を傷つけるようなことはしないと、信じていたからだ。 「副社長は、なかなか難しい相手に恋をされたようですね」 「難しい相手?」 「恐らく、彼女は一筋縄ではいかないと思いますよ」 彼女を知っていく度に、僕の彼女への想いは増していった。 でも、心の距離が縮まらない。 そばにいるのに、手を伸ばせば届きそうなのに。 肝心なところで、手に入らない。 やがて僕は、彼女が心に深い傷を負っていることに気付き始める。
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