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「正直、余計なことをしてくれたと思っていますけどね」
「あ、やっぱり?」
「でも、いいんじゃないですか。ずっと一人で仕事をしてきた望愛にとっては、良い刺激になるでしょうし」
「そうなんだよ。昔の望愛なら、絶対に他人と働くなんて無理だっただろうけど、瀬名くんと付き合い始めてから望愛はだいぶ変わったからさ」
僕との出会いで彼女が良い方向に変わったのだとしたら、それは僕にとっても喜ばしいことだと思う。
特に望愛のことをずっと近くで見守ってきた柊さんにとって、望愛の変化は何より嬉しいことなのかもしれない。
「瀬名さん……お待たせしました」
「じゃあ、帰ろうか」
その日は、久し振りに手を繋ぎ家までの道を歩いて帰った。
僕が出張を終えて帰ってきたことを素直に喜ぶ望愛は、やはり僕にとって究極の癒しの存在だ。
みっともないことを承知で、バイトとして入った彼のことについて聞き出そうとしたけれど、言いかけてすぐにやめた。
もちろん僕としては、何も起きないことを願っていた。
一緒に仕事をするとはいえ、彼女が他の男と親しくなるようなことはないだろうと考えていた。
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