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想いを寄せる彼女と暮らしていく中で、僕の生活は見違えるほどに変わっていった。
それまでは、家は寝るだけのために帰る場所だった。
一人でいることには慣れていたけれど、それでも心のどこかで物足りなさを感じていた。
でも彼女と暮らし始めて、すぐに気付いた。
家は、癒されるための場所なのだと。
彼女がいるだけで、空気が違う。
何もしてくれなくていい。
ただそこにいるだけで、心が満たされていく。
もう一人暮らしには戻れないと、同居を始めてすぐに感じた。
「望愛ちゃん、お帰り」
「た、ただいま、です……」
「お風呂、沸かしておいたから入ったら?」
「え!す、すみません!家事は私の担当なのに……」
僕は一人暮らしが長かったため、大抵の家事は一通りこなせる。
特に風呂を沸かすなんて、誰にでも出来ることだ。
それなのに彼女は、心から申し訳なさそうに何度も頭を下げている。
そんな律儀な彼女を見ていると、つい僕は意地悪したくなってしまう。
「一緒に入る?」
「なっ……、は、入りません!へ、変なこと言わないで下さい……」
顔を真っ赤にしながら自分の寝室へ駆け込む彼女を見つめ、にやける自分。
今の僕は、きっと誰が見ても気持ち悪いくらいデレデレしているだろう。
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