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ずっとこの幸せな日々が続けばいい。
誰にも邪魔されたくない。
僕は仕事を家に持ち帰り、なるべく早く帰宅するようになっていた。
そんなときだった。
妹の麗奈が、突然旅行と称して札幌にやってきたのだ。
「北海道に来るなんていつ以来かしら。やっぱり東京とは違って田舎ね」
「何言ってるんだよ……札幌も十分都会だろ」
麗奈は典型的なお嬢様気質で、僕からすれば世間知らずのワガママな子供だ。
望愛より年上のはずなのに、望愛の方が格段に大人に見える。
それは望愛が麗奈より老けて見えるというわけではなく、今まで生きてきた中での経験値がそうさせているのだろう。
「ねぇ、せっかく来たんだしどこか美味しいランチ連れて行ってよ」
「いいけど、食べたらすぐ会社に戻るからな」
「えー、これから買い物に付き合ってくれないの?」
「仕事を放り出して妹の買い物に付き合うわけないだろ」
僕の腕に自分の腕を絡ませて歩く麗奈は、なぜか昔から僕によくなついている。
僕は兄としてあまり優しく出来ていない方だと思うけれど、それでも結局麗奈のワガママを聞いてやることが多いかもしれない。
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