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「調理の専門学校に通ってる、安藤くん。今日から春休みの間だけここでバイトすることになったんだよ」
「へぇ、バイト雇ったんですか」
「そう。常連さんの息子なんだけど、頼まれたら断れなくてさ。厨房で望愛と働くことになるけど、彼氏いるから手出すなってちゃんと言ってあるから大丈夫だよ」
僕は苦笑しながらも、内心このとき既に嫌な予感がしていた。
店を出ていくとき、俺に向けたあの視線がどこか僕を挑発しているような気がしてならなかったからだ。
「望愛は大丈夫?嫌じゃないの?」
「……嫌では、ないです。昔だったら、嫌だって拒否してたかもしれないですけど……今は、何でも挑戦してみたいです」
望愛は僕と交際を始めたことを機に、少しずつ変わろうと努力している。
狭い世界で生きてきた彼女が、広い世界に飛び込もうとすることは良いことだと思う。
出来る限り邪魔はしたくないし、束縛もしたくない。
「……そっか。確かに望愛にとっても、成長に繋がることだろうね」
「繋がればいいなって……思ってます」
僕は心の中で柊さんに文句を投げかけ続けた。
正直、望愛が他の男と話す姿さえ見たくないと思ってしまう。
店の常連から息子を働かせてほしいと頼まれたって、普通は断るだろ。

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