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学校は四階建てだ。
上に上がったのなら、三階と四階のフロアをくまなく捜せばいい。
三階は実演が行われている教室がないため、人がいない。
普通なら、ここにいるはずはないのに。
僕はなぜか直感で、望愛がこの階にいるような気がしていた。
教室の扉を開け、中を確認していく。
いくつかの教室を覗いていくと、どこからか微かに人の声が聞こえた。
「……望愛?」
すぐに消えてしまいそうな、細く震えた声。
どんなに小さくても、すぐにわかる。
今僕の耳に届いた声は、確かに望愛のものだ。
僕は声が聞こえてきた方に向かって走り出した。
そして、三階の一番奥の教室の前に辿り着き、扉を開けた。
するとそこには、震えながら床にうずくまる望愛の姿があった。
「望愛!」
僕は必死に声を上げ、望愛のそばに駆け寄った。
一体、何があったのか。
詳しいことは、望愛の姿を見ただけではわからない。
けれど、望愛がひどく動揺し、発作を起こしてしまうほど追い詰められているということだけは、すぐにわかった。
「僕がいるから、もう大丈夫だよ。ゆっくり息を吸って、吐いてみて」
僕は望愛を安心させるため、背後から震える体を優しく抱きしめた。
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