好きだけじゃ足りない-2

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望愛は取り乱しながらも、僕が言ったように息を吸い深く息を吐いた。 発作を起こしてしまったときは、呼吸法で対処することが有効だ。 柊さんから以前、望愛がパニック発作を起こしたことがあると聞いていたため、事前にその原因や対処法について調べていたのだ。 まずは、彼女の不安を取り除くことを第一に考えることが大事だ。 僕は彼女の背中をさすりながら、そばで呆然と立ち尽くす安藤に視線を向けた。 「望愛さん……」 恐らく、彼は望愛を傷つけるような人間ではないだろう。 それでも、彼の行動が望愛をパニックに陥らせた原因であることは間違いないと思う。 彼にとっては何気ない行動だったとしても、望愛にはそれが幼い頃のトラウマを思い出させるものだったのだろう。 「望愛、とりあえず家に帰ろう。立てる?」 「はい……」 「ごめん、ちょっと待ってて」 僕は呼吸が落ち着いた望愛を立ち上がらせ、立ち尽くしたままの安藤の元へ近付いた。 「安藤くん。何があったのかは知らないけど、君には僕の望愛に触れる権利はないから」 望愛に苦しい思いをさせた彼に、何も言わずにはいられなかった。
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