好きだけじゃ足りない-2

16/22
252人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
彼女の頬に触れ、僕はその柔らかな唇にキスをした。 本当は濃厚なキスをするつもりだったけれど、彼女の体調を考慮して触れるだけのキスにとどめた。 ここで本格的なキスをしてしまったら、僕は理性を抑えられる自信がない。 けれど唇を離すと、彼女が物足りなさを感じていることが表情で読み取れてしまった。 「……物足りない?望愛がもっとキスしてほしいって言うなら、してあげるよ」 大人げない発言だとわかっていても、困る彼女の顔が見たくて止められない。 「なんて、意地悪言ってごめん。これ以上キスしたら止められなくなりそうだから……」 すると彼女の口から、予想外の言葉が返ってきた。 「キ、キス、やめないで下さい……キスだけじゃなくて……私の全部、もらって下さい……っ」 このとき僕は、どんな顔をしていただろう。 まさか、彼女の方からそんなことを言ってくれるとは思いもしなかった。 キスの先に進みたい。 その気持ちは常にあったけれど、強引に彼女の初体験を奪うようなことはしたくなかった。 だから僕は、相当慎重になっていたと思う。 正直、あと半年は我慢する覚悟はあった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!