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簡単に消えることはない、心と身体に受けた傷。
どうして彼女が、こんな酷い目に遭わなければならなかったのだろう。
きっと今でも彼女は、自分の裸を見る度に虐待を受けた過去を思い出すに違いない。
忘れることなんて出来るはずがないのだ。
身体中に、刻み込まれているのだから。
それでも僕は、赤黒く変色した傷が散りばめられた身体を、汚れているとは思わなかった。
「望愛は綺麗だよ」
望愛は汚れてなどいない。
僕はそれを証明したかった。
すると彼女の澄んだ瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。
「綺麗なわけないじゃないですか……」
僕は彼女の身体に残っている傷の中で、最も範囲の広い腹部の傷にそっとキスをした。
恐らくこれは、火傷の痕だろう。
胸がきつく締め付けられていく。
彼女が抱える苦しみが、胸の奥に流れ込んでくる。
「僕は、望愛の全てが欲しいんだよ。君が苦しんだことを証明するこの傷も、全部僕にも背負わせてほしい」
全て僕に背負わせてしまえばいい。
それで彼女の気持ちが少しでも楽になるのなら、僕は喜んでその苦しみを引き受ける。
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