好きだけじゃ足りない-2

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「その男性は、楠さんに好意をお持ちなんですか」 「さぁ、どうだろうな。僕も一瞬顔を合わせた程度だから」 「もし彼が楠さんの料理を食べて、楠さんの仕事をしている姿を間近で見ているのだとすれば、好意を持っている可能性はあるでしょうね」 「……お前は相変わらず意地が悪いな」 葛城は日頃から僕に恨みでもあるのだろうか。 不安を煽るようなことばかりを口にする。 「そうですね、正直少し楽しんでいます。昔の恋人に対しては嫉妬などしてこなかったあなたが、学生の男相手に苛ついている姿は新鮮ですから」 「……」 僕は言葉を返す気力もなくし、再度窓の外に視線を向けた。 嫉妬なんて感情は、厄介で面倒だ。 時には冷静じゃいられなくなることもある。 本当の恋を知れば知るほど、今までの自分ではいられなくなるような気がした。 小さな苛立ちを感じながら会社に到着すると、僕は真っ先にパソコンを立ち上げメールを開いた。 届いていたビジネスメールを一つ一つ既読にしていき、素早く返信の文を打ち込む。 しばらくしてパソコンの画面から視線を外し、葛城が淹れたコーヒーに口をつけると、スマホの方にメッセージが届いていることに気が付いた。
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