好きだけじゃ足りない-2

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目的地に到着したタクシーを降りると、学校の正門にはオープンキャンパスが開催されていることを知らせる看板が立てかけられている。 思っていたよりも、人が多い。 ほとんどが私服のため、スーツを着ている自分がやけに目立つ。 周囲の視線が若干気になりながらも、僕は正門を突き進んだ。 でも、どこから捜せばいいのか。 こんな人混みの中で、電話も繋がらない。 僕はどんな大勢の人の中からでも、望愛を見つけられる自信はある。 だとしてもこの状況では、かなりの時間を費やしてしまいそうだ。 とりあえず学校の中を一通り見て回るしかない。 すると、まだ十代と見られる若い女性三人組が僕に近付いてきた。 「あの、これ今日のパンフレットです!もし貰っていなかったら、どうぞ」 「あぁ、ありがとう」 受け取ったパンフレットを見ると、調理の実演が行われている教室がいくつか図に載っていた。 「……とりあえずここに行ってみるか」 「お兄さん、もし良ければ私達が案内しますよ!」 「あぁ、大丈夫だよ。これ見れば大体わかるから」 「そのパンフレット、正直わかりづらいんです。行きましょう!」 そう断ったのに、若い子達は強引に僕の腕を引っ張った。
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