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「でも、嬉しかったです。……幸せ過ぎて、怖いくらいです」
望愛は僕の体に寄り添いながら、小さな声で呟いた。
幸せなはずなのに、彼女の声には言葉にならない不安が隠れているような気がした。
「怖がることないよ。この幸せは、永遠に続くものだから」
どうすれば、彼女の心の奥に根付いている苦しみを取り除くことが出来るのだろう。
僕は彼女に自身の過去を打ち明けられたときから、ずっと考えていた。
僕に出来ることなら、何だってしてあげたい。
望愛はいつものように柔らかな笑顔を見せ、そこから深い眠りへと落ちていった。
「……おやすみ、望愛」
僕は望愛が眠りにつくのを確認してからベッドを出て、望愛の心配をしている柊さんに連絡を入れた。
望愛が発作を起こしたことは、柊さんには言わなかった。
言えばきっと、更に心配させてしまうに違いない。
それに、心配だからといって今この場に駆け込んで来られても困る。
この時間だけは、誰にも邪魔されたくない。
望愛の寝顔を見つめながら、僕は心の片隅に小さな焦りを感じていた。
いつか、望愛は僕の前からいなくなるのではないか。
根拠なんて何もない。
ただ、そんな気がしてしまったのだ。
僕は心に浮かび上がった不安を掻き消すように、彼女の頬にキスを落とした。
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