誰より大切な君が生まれた日

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「望愛から……聞いたんですか?」 「えぇ。今にも泣きそうな顔で話してくれたわ。……本当に、酷い親もいるものね」 望愛はどんな気持ちで、僕の両親に自分の過去を語ってくれたのだろう。 他人に話せば、嫌でも辛い過去の記憶を思い出してしまう。 きっと話しながら、彼女は心を痛めたに違いない。 「湊。あの子を幸せにしてやりなさい。それが出来るのは、世界中探してもきっとお前だけだろう」 それは、僕と望愛が未来を共に歩んでいくことを許してくれた証の言葉だった。 「望愛を僕の妻にすることを、認めてくれるんですね」 「あぁ、私は賛成だよ。でもその前に、まずは彼女にしっかりプロポーズをして了承を得ることが先決だろう?」 「……」 なぜ、僕がまだ望愛にプロポーズしていないことを、父には見破られているのだろう。 「彼女の様子を見れば、大体わかる。お前もいつかは社長になるんだから、今の内にもっと周囲に目を配れるようになれ」 父は僕に忠告し、ニヤリと不敵な笑みを見せた。 つい昨日まで僕と両親の間にあった厚い壁が完全になくなる日も、もしかしたら近いのかもしれない。 父が浮かべた笑みを見つめながら、思った。
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