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苦しかったはずだ。
僕に助けを求めたかったはずだ。
でも、僕はそばにいなかった。
望愛を助けることが出来なかった。
なぜ、昨夜だったんだ。
なぜ、今さら会いに来た?
なぜ、望愛は僕に何も言わずにいなくなったのだろう。
「望愛……!」
望愛に電話をかけても、スマホの電源が切れていて繋がらない。
今、望愛がどこにいるのか、無事でいるのか、何一つわからない状態だ。
とりあえず、望愛の行き先がわかる手掛かりを見つけるために、札幌に帰った僕は柊さんと合流する前に自分の家に直行した。
家にはもちろん望愛の姿はなかった。
部屋はいつも通り綺麗に掃除されていて、今にも望愛が『お帰りなさい』と言って笑顔で出迎えてくれるような気さえしてしまう。
望愛が本当にいなくなったなんて、僕には信じられなかった。
でも、望愛がいなくなったことを証明する物を僕は見つけてしまった。
ダイニングテーブルに置かれた、一枚の便箋。
そこには綺麗な字で、僕への謝罪と感謝の言葉が並べられていた。
『瀬名さんと暮らした日々は、私の宝物です。沢山の幸せをくれて、ありがとうございました。そして、ごめんなさい。』
「……どうして……」
望愛が残したものは、この置手紙しかなかった。
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