解き放たれた光の先に

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恐らく望愛は、既にこの街を出てしまったのだろう。 父親が現れたこの街には、いられないと思ったのかもしれない。 僕のことも、柊さんや夏さんのことも、大切にしていた居場所を全て捨てて生きていく道を選んだ。 でも、本当に全てを捨てることなんて出来るのだろうか。 望愛がどれだけ柊さんや夏さんのことを慕っていたか、僕は知っている。 そして、僕のことをどれだけ愛してくれていたのかということも。 だから僕は、望愛がいなくなった現実を信じることは出来なかった。 柊さんと合流するためマンションを出ようとしたとき、コンシェルジュの樫木さんに声をかけられた。 「瀬名様。実は今日の朝早くに、楠様が出て行かれる所を見たのですが、どこか様子がおかしかったので、少し気になりまして……」 詳しく話を聞くと、どうやら望愛は何かにひどく怯えているような様子だったらしい。 事情を何も知らない人間からもそのように見えたということは、望愛はよほど精神的にまいってしまっていたのだろう。 「望愛がどこへ行ったかは知らないですよね」 「えぇ、さすがに行き先までは……」
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