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「わかりました。ありがとうございます」
結局手掛かりと言えるものは、何一つ見つけられなかった。
柊さんと夏さんは、何度も僕に謝罪を繰り返した。
特に柊さんはひどく憔悴しているように見えた。
「瀬名くん、本当にごめんね。望愛がいなくなったのは、私たちのせいなの。昨日あんなことがあって……もっと望愛の行動に注意していれば、こんなことにはならなかったのに……」
「俺が悪いんだ。……兄貴に、望愛に会いたいって言われたとき……はっきり断っていれば良かったんだよ。望愛が今さら兄貴に会いたいって思うはずがないのに……!」
「望愛は、柊さんが今でも連絡を取り合っていたことを知って、裏切られたような気持ちになったのかもしれないですね」
自分自身を責め落ち込む柊さんに対して、更に追い討ちをかけるようなことを言う僕の対応は、人として間違っているのかもしれない。
でも、望愛のことを思うと何も言わずにはいられなかった。
「望愛が自分から父親に会いたいと言える日が来るまで、絶対に会わせるべきじゃなかった。……正直、怒りでおかしくなりそうですよ」
望愛の気持ちを考えずに行動に移した望愛の父親への怒り、望愛の気持ちを正確に汲み取れなかった柊さんへの怒り、そして何も出来なかった自分への怒り。
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