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「べ、別に私は葛城とどうこうなりたいわけじゃ……!」
「へぇ、交際したいわけじゃないのか。じゃあ、ずっと片想いのままでいいんだな」
「……お兄ちゃんって、本当に意地悪よね」
「そう?望愛には優しいってよく言われるけど」
軽く不機嫌になった麗奈としばらく言い合った後、僕は実家を後にした。
顔を出すようにはなったけれど、あまり長居をするつもりはない。
焦らず、ゆっくりと距離を縮めていければいい。
あまり感情を表に出さない母が、帰宅した僕を見て少し嬉しそうに微笑んだ。
その姿を見れただけで、今は十分だ。
ホテルに戻りベッドに腰掛けた僕は、スマホを取り出した。
なぜだろう。
実家に帰ったときからずっと、望愛の声が聞きたくて仕方なかった。
昨日まで望愛のそばにいたのに、既に恋しくなっている。
たった一日離れただけでこんなにも望愛が欲しくなってしまうなんて。
僕の想いは、日に日に膨れ上がっている。
いつになれば、この想いに限界は来るのだろう。
僕は望愛に電話をかけるため、スマホを操作し望愛の携帯番号を画面に表示させた。
すると、ちょうど僕が発信ボタンを押そうとしたタイミングで、望愛から電話がかかってきたのだ。
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