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会場内がどよめきに溢れ返る中、僕は父に続いて社長就任への意気込みについてステージ上で語った。
この話は、僕が東京に戻ってすぐに父から打ち明けられていた。
どうやらだいぶ前から、社長の職を退くことを考えていたらしい。
今回、僕の結婚を機に退くことを父はベストタイミングだと思ったようだ。
もちろん僕は、社長の職を引き継ぐと即答した。
高校生の頃に、父が仕事に打ち込む姿を見たときから僕の運命は決まっていた。
いつか、父が大切に作り上げた会社を僕が継ぐ。
それが長年僕が目指してきた目標だった。
僕がスピーチを終えると、先ほどはどよめきで溢れていた会場内に拍手が響き渡った。
スピーチを終えて望愛の元に戻ると、望愛は事態をまだ飲み込めていないのか、目を丸くして僕を見ている。
予め、望愛に僕が社長になる日が近いことを話しておこうと思っていたけれど、望愛の驚く顔が見たくて、今この瞬間まで秘密にしていたのだ。
「驚いた?」
「はい、すごく……びっくりして、胸がドキドキしてます……」
「やっぱり、秘密にしておいて良かった」
驚く望愛も、また可愛い。
どうやら僕は望愛の表情フェチなのかもしれない。
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