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その次の瞬間、僕は望愛が何を言おうとしているのかわかっていた。
だから、望愛が全てを言い終える前に言葉を被せた。
「あの、湊さん!私……っ」
「僕が社長に就任しても、望愛は仕事を辞めなくていいから」
どうやら言おうとしていたことが当たったらしい。
望愛は驚きながら口をパクパクさせている。
「ど、どうして……?」
「望愛のことは、何でもお見通しだよ」
望愛の表情や言葉にはいつだって嘘がない分、言いたいことも読めてしまうときがある。
例えば、ちょうど今みたいに。
「でも、社長の妻が他で仕事をしていてもいいんでしょうか……」
「もちろん。今は共働きの夫婦なんてどこにでもいるんだから」
「でも……」
「世間体なんか気にすることないよ。僕は、望愛には好きなことをしながら生きてほしいんだ」
好きなことを仕事にしている人の割合は、とても少ない。
たった一度きりの人生なのだから、誰にも遠慮することなく、思うように生きていてほしい。
特に望愛には、辛い過去がある。
だからこそ、今は沢山苦しんだ過去の分も、自分の思う道を進んでほしいと願う。
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