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「望愛は僕を簡単に振り回すよね」
「ふ、振り回してなんか……」
「自覚ないの?悪い子だな」
「み、湊さんの方が振り回してると思います!」
そう言った後、望愛は僕の背中に手を回し、ぎゅっときつく抱きしめた。
「……湊さん、愛してます」
耳元で囁かれた愛の言葉は、一瞬で僕の胸を貫いた。
愛してる。
その言葉は、僕が知る中で究極の愛の言葉だ。
それを望愛の口から聞けたことで僕は感激し、うっかり涙をこぼしそうになり慌てて目を抑えた。
「湊さん……?」
「望愛、不意打ちのそれは反則だから」
「す、すみません。どうしても言いたくなってしまって……」
あぁ、もう。
情けなく、泣いてしまってもよかったかな。
望愛の前ではいつだって頼れる大人の男でいたいのに、たまに子供に戻ってしまいそうになることがある。
望愛の純粋な気持ちが、そうさせるのだろうか。
「僕も、愛してるよ。……この先一生、永遠に」
望愛と出逢い、僕は人を愛する喜びを知った。
愛なんて何の役にも立たないと、愛を信じていなかった僕はもういない。
唇を重ね、身体を重ね、指を絡め、僕たちの間に少しの隙間もないくらい、愛し合う。
この先の未来も、僕の隣で愛しい彼女が満面の笑みを浮かべていますように。
幸せだと言いながら、もう二度と彼女が苦しむことはないように。
ただ、それだけを僕は切に願う。
END
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