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メンデルの法則
「部長、何してるんですか?」
今日、美術部は休みだと聞いたはずなのに部長の遠山彩香が一人美術室で筆を動かしていた。
「あぁ結城くん」
そう言って遠山は廊下に立つ結城をチラッと見ただけで、またすぐに筆を動かし始めた。
「卒業記念の絵が私だけ進みが悪くてさ、美術室借りてやってるの」
へぇと言って結城は、ぼんやりと窓の外から遠山の姿を見ていた。
「暇なら入りなよ。別に行くとこないんでしょ?」
ふんっと鼻をならしながらも結城は美術部のドアを開けた。
部屋の隅にある大きいクッションにもたれかかりながら結城は思い出し笑いをしていた。
「なに?高1男子の思い出し笑い怖いんですけど」
「何でだよ」
そう言ってムスッとする結城に遠山は、何で笑ったの?ともう一度聞いた。
「入部届け書かされた時も同じようなこと言われたなと思って」
「そうだったかな?あの結城くんが先生に呼び出されてた日の帰りでしょ」
そうだ。夏休みにも関わらず心に響かないお説教を受けた帰り、美術室の前で足が止まった。
真剣な顔で絵に向かっている遠山が、とてもキレイに見えたのだ。
その視線に気づいた遠山がツカツカと結城に近寄り1枚の紙を差し出してきた。
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