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「そうですよ。いきなり人数が足りてないから暇なら入れって入部届け突きつけられて。下手だから無理って言ったのに」
「足の遅い陸上部員も味音痴の料理部員もいるからね。やるかやらないかだよ」
「あの時も言ってましたよね」
最終的には、部室に置いてある人をダメにするというクッションを好きなだけ使っていいからと言う言葉につられ入部届けを書いていた。
ここで時間を潰せる――
家に帰りたくない結城の本当の想いはそこだったが。
「もうすっかり、そのクッション結城くん専用だよね。今や誰も触らないよ」
「時々窓際で太陽に当ててるしカバーも洗濯してるからキレイですよ」
知ってるーと遠山は振り向かずに笑っていた。
「部長、あん時本当は何で俺を誘ったんですか?」
遠山は少し考えてから、やはり振り向かず筆を動かしながら答えた。
「知り合いにね、何かのトラブルで学校に居場所がなくなって、家庭の問題で家にも居場所がなくなって。どこか遠くに行っちゃった人がいたの。今じゃまともな生活もしてないかもしれない」
品行方正な部長に、そんな知り合いがいたことを不思議に思いながら、その誰かを自分と照らし合わせていた。
「きっと、どこか小さくても居場所があれば良かったんじゃないかなって思ってて。それをね、結城くん見て思い出しちゃった」
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