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家のプリンターで写真をスキャンして
原本は茶封筒に戻した。
正月が明けてすぐにひいばあは良郎さんの遺品と少しの荷物と共に施設に入所した。
同じ頃、俺と親父はデータから印刷した写真を1枚ずつ持ち、降り積もる雪の中、桜の捜索を開始した。
まず最初に該当の範囲の国道から上の住宅地を手分けをして歩いてみた。
しかし、そこで致命的なことに気づいた。
樹木に疎い俺達は、花が無いとどれが桜の木なのかわからなかったのだ。
とりあえず大きな木を見つけては、スマホで
調べた桜の木の特徴に照らし合わせてみた。
道行く人に写真を見せて、似たような桜の木を知らないか尋ねた。
だが、それらしき桜はなかなか見つからない。
冬が過ぎ、季節は春へと移っていた。
俺も親父も時間の許す限り桜を探したが
発見には至らなかった。
気づけば4月も半ばに差しかかろうとしていた
土曜日のこと。
探索範囲を広がてみたがやはり見つからず
取り敢えず初心に戻り最初の頃に探した辺りをもう一度歩いてみることにした。
うかうかしていると桜が咲いてしまう。
いや、咲いた方が見つけやすいかな?
でも、すぐに散っちゃうから間に合わないかもしれないし・・・。
そんなことを考えながら親父と別々にあちこち探し回った後、約束した時間に待ち合わせ場所で落ち合った。
どちらも成果はなく、グッタリとしながら青空を見上げた時。
視界の端を1人の高齢の男性が横切った。
恰幅がよく眼鏡をかけたおじいさんは、白髪を微風に揺らしながら国道から小路へ曲がり、緩やかな斜面を杖を頼りにゆっくりと登っていく。
特に荷物を持っているわけでもなく、目的が
ありそうにも思えない。
これはきっと運動がてらの散歩だ。
ひいばあも元気な頃は、よく庭や家の周りを
あんな風にのんびりと歩いていた。
と、言うことは。
きっと近所に住んでいるはずだ!
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