3月21日(水)

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親父がおじいさんの背中をさすりながら言った。 「ありましたよ、雀の絵。」 「絵が・・・?」 「はい。祖母が大切にしまっていた遺品の中に雀の絵がありました。あなたが描かれたものだったんですね。」 「なんと・・・未だに持っていて下さるとは勿体無いことだ。今、お姉さんはどうされていますか?」 「病気を患ってはおりますが市内で暮らしております。」 「そうですか。弟さんの分まで長生きされているんですな。 いや、今日はあなた達にお会いできて本当に嬉しかった。どうぞお大事にな。それじゃ。」 おじいさんは会釈をして歩き出そうとした。 「あっ!あの、すみません!桜の木は何処にありますか?」 俺が慌てて聞くとおじいさんは立ち止まって笑った。 「ああ、肝心なことを忘れとった。その桜なら、すぐそこの水色の家と白い家の間を入った奥にあるはずじゃ。前はこの道路からも眺められたが、水色の家が建つとすっかり隠れてしまいわしも久しく見てはおらんがな。しかし時期になるとこの辺りで桜の花びらを見かけるからまだあると思うがの。」 「こんな近くだったのか・・・。」 「ありがとうございます!!」 俺達が頭を下げると、おじいさんは「こちらこそな。」と言い残して、ゆっくりゆっくり坂道を登っていった。
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