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おじいさんを見送ってから俺と親父は教えて
貰った家と家の間を覗き込んだ。
軽自動車なら二台並べて停められるくらいの幅が
ある。
どうやらそこは奥にある茶色い家の私道のようだ。
手前の方と玄関前まで続く小道のみ舗装されていて
、
小道の左側には青々とした芝生が広がっている。
ここから見えるのはそれだけだ。
俺達はその家を訪ねてみることにした。
両側の家に挟まれた私道を進むと、まずは右側によく手入れされた花壇が現れ、赤や黄色のチューリップがきれいな花を咲かせていた。
そして更に歩いていくと、左側の家に遮られていた 視界がパッと開けた。
広い庭の左奥の隅に、青空に向かって力一杯
無数の枝を伸ばしている大きな木が立っていた。
間違いない、確かにあの桜の木だ。
写真で見るより遥かに立派なその姿に、70余年の時の流れを感じた。
やっと見つけた・・・。
俺と親父は頷き合って、“石沢”と言う表札がかかる家のインターホンを押した。
つまりはそこがはなちゃんの家だったのだ。
その日も4日後に訪ねた時も不在だったが、三度目の正直とはよく言ったもので、翌週の土曜日に親父がようやくはなちゃん達に会うことができた。
理由を話すと、はなちゃんのご両親はひいばあを連れていくことを快く承諾してくれて、桜の花が見頃になったら連絡を貰えることになった。
俺も親父も、もちろん家族みんなが桜の便りが届くのをそわそわしながら待った。
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