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そしてついに開花の連絡が入り、5月の連休2日目に
俺と親父は施設から一時帰宅していたひいばあと共に
石沢家を訪れた。
お父さんとお母さん、そしてはなちゃんが出迎えてくれた。
それが初めての出会いだと言うのに、挨拶はしたもののひいばあにばかり気を取られていた俺は、失礼ながらその時のはなちゃんの記憶が全くない。
俺はひいばあを乗せた車椅子を桜がよく見える小道の途中に停めた。
声をかけても、やはりいつものように無反応だった。
ふと思いついて、芝生に落ちていた桜の花びらを
ひいばあの掌に乗せた。
するとひいばあは顔を上げて、やっと満開の桜を見つめ顔を綻ばせた。
久々にひいばあの瞳に光が戻った。
俺がホッとした次の瞬間。
ひいばあは何を思ったのか良郎さんの名前を
呼びながら、急に前へ身を乗り出し危うく車椅子
から転げ落ちそうになった。
寸でのところでその体を支えてどうにか事なきを
得たが、ひいばあは桜の木の方へ手を伸ばし、弟の
名前を呼び続けた。
車椅子を桜に近づけてやりたいところだが
綺麗な芝生に乗り入れるのは気が引けた。
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