3月21日(水)

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「ごめんね、いつも。お母さんたら貴也さんのことが好きで好きで仕方がないの。」 車が走り出したのと同時に、申し訳なさそうに口を開いた石沢 はなちゃんは俺よりひとつ年下で、この4月から大学2年生になる。 普段はスカート姿が多いが、今日はフード付きのコートにジーンズ、それに冬道もOKのスニーカーと言うスポーティな服装だ。 これから向かう隣の市の水族館は、坂が多い上に海辺なので風が強くて寒い。 それを考慮しての出で立ちだろう。 こんな風にその場に合わせた服装ができるところとか。 ストレートの艶やかな黒髪とか。 それをきれいに巻いて、フワフワなアップにしたその髪型とか。 キラキラと輝くような大きな瞳とか。 見ているこっちまで嬉しくなるような明るい笑顔とか。 いつもさりげなく周囲を気遣うところとか。 とにかくはなちゃんに会う度に、どれだけ自分が彼女のことを好きか再確認してしまう。 人が振り返るほどのとびきりの美人ではないけど清楚で無垢なはなちゃんはとても可愛くて、いつまでもその表情(かお)を見ていたくなるんだ。 「俺もはなちゃんのお母さんのこと好きだよ。面白いよね。」 クスクス笑いながら答えると、「そう言ってくれると助かる。」とはなちゃんも微笑んだ。
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